僕が端末テープを斜めに切るわけ

KANO-ROPES代表のカノさんこと鹿子澤浩美です。
ご存じのとおり僕は、多くの救助隊員に200mの長さから必要な長さ分を切って販売しています。
ただ切って売ってるだけではありません。端末を独自に開発した熱処理器具を使って、一本一本丹精を込めて加工しているのです。

手作業でなく機械でオートメーション化して加工できないかと技術者に相談もしたが、オートメーションというものは、一分間に何十、何百と製造する必要があるものでなければ、コスト倒れになり、開発費すら取り返せないだろうと忠告されました。だから手作業なのです。


端末の熱処理加工の後は、ビニールテープを巻きます。ロープ約3周して、斜めにカットするのです。
なぜ斜めにカットするのか・・・それはタイム短縮のためです。


斜めに切ることがなぜ短縮につながるのか?
それは、斜めに始まり、斜めに終わることで、垂直にカットするより段差が出にくいからです。
始めと終わりを正確に合わせることによって限りなく段差なく、スムーズになすのです。


斜めにカットすることによって、結索を何度も繰り返してテープの端が剥げてきた場合、垂直にカットしてれば、剥げる面積が大きくなり、最悪、巻き直さなければいけないですが、斜めにカットしていれば剥げて切るのは斜めカットの頂点部分調整してちょっとを切れば済むからです。
これも時間短縮の一つ。巻き直す時間を結索訓練に充てられる。僕はそこまで拘りました。

また、端末の熱処理を器具を使って正円に近い処理をすることによって、誤って踏んでしまった時の割れも防げるほど堅牢なものになります。瞬間接着剤をしみこませ端末処理しても同等な強さは得られないはずです。円と三角は外力に対して強いことを利用したつもりです。

この熱処理加工は、僕が現役救助隊の時には開発できなかったものです。
端末の引っ掛かり、ビニールテープの段差、剥げを滑らかにする方策に閃きが走ったのは、消防官の職を退いて救助隊員を外側から支えようとして訓練を見るようになってからでです。

端末処理は、器具を発明するまで切出し刀を熱してコテのように使用しながら加工していました。
小手を使った端末処理をしていた時は、指から豆が消えることはありませんでした。それでも端末の品質を均一に出来ず、端末加工のバージョンは器具開発までに5作目を超えていました。

そうまでして端末加工にこだわったのは、隊員の方に自分の指先、手の返しなど、自分の技術以外のマイナス要因を減らして、集中して欲しいと思ったからでです。
外的マイナス要因のない中でベストのタイムを出せなかったとき、純粋に自分の未熟さだけに責任を負わせ、自らを戒めて原因を探れるはずです。逆に、ベストを出せた時は、純粋にあなたの実力の証と言えると思います。



そんな細かいことを気にしなくても速い奴は速い。
「なんぼ結索を繰り返したか」が重要だ、全てだという人もいます。
実際、全国大会入賞を果たしたある選手のロープを見たとき、ロープは使い込まれて端末テープは傷んでいて、端末自体もカチッと処理されていない資器材検査合格スレスレものでした。この選手が私のロープを使っていれば、入賞ではなくテッペンだったかもしれないと思うと益々私のロープを薦めたくなるのです。



得物は、手入れしてなんぼ、一閃で切れてなんぼです。
僕がビニールテープを斜めに切るわけ・・・それはビニールテープもロープの切れ味を左右する重要なアイテムの一つだからです。・・・タイム短縮に貢献していることは間違いありません。